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2026.04.21 Devlog

ImpachiのAI活用論

高 大輔

「これがあれば無限にゲームが作れるのでは!?」— この3年間で、同じことを3回思った。そして3回とも裏切られた。

前職を辞めて2年。その間にやったことは「インディーゲームの消化」、そして「次のゲームの構想」。何より最新AIの研究だ。 実際には、拙作のゲームが2022年の11月にリリースされた以降は、だいぶ時間的余裕ができたのでそこから研究をはじめていた。 まさにちょうどそのタイミングで、「Stable Diffusion」「ChatGPT」が公開された。 IT史の転換点にリアルタイムで立ち会えたことは非常に大きい。

ChatGPTでは、ゲームのリサーチ、企画の壁打ちを試した。 プロンプト次第で出力が大きく変わるし、少なくとも当時は2021年頃のデータまでしかモデルに入っておらず、かなり難儀だった。 自分のように専門性が高い分野では、なかなか安定した出力ができなかったが、一般的な語句のやりとりであればまあ使えるし、 何より、今まで自己完結や対人でやるしかなかったものが、24時間いつでも行なえることは大きかった。

Stable Diffusionは、ローカルで無限に画像生成ができることに衝撃を受けた。 「これがあれば無限にゲームが作れるのでは!?」とも思ったが、使っていくうちに結局同じようなものしか出力できないし、 モデルデータ次第だし、プロンプトの精度も甘く、何千枚も絵を描いても一枚も使えるものがないという悲しい結果だった。

2025年4月にChatGPTの大型アップデートにより、画像生成が大きく進化した。 「これがあれば無限にゲームが作れるのでは!?」とまた思ったが、やはり使っていくうちに心は萎えていく。

現状でも写実的な画像の精度は上がっているものの、ゲームアセットとして使うような画像の生成はモデル学習元が少なすぎるのか非常に劣悪なもので、 イラストチックなものは、色温度が非常に低いのと、パターンが限られているように思う。 いまの世間的な生成AIに向けられたバッシングが抑止力になって、今後すぐに進化するのは難しいと感じている。

2025年10月にGeminiの画像生成が大幅にアップデート。一貫性を保てるようになったのは大きい。 この画像から人物を抜いてくれ、右を向けてくれ等、元画像をソースとして扱えるのは素晴らしい。 これまでは似たような画像を生成するだけであって、他の細かい要素が変わりまくっていたものだが、それが解消されたのだ。 これならゲームに活用できる!と思ったが、残念ながらゲームアセットにそのまま使うのはクオリティが低いのだ。

一時は期待を持って挑んだものの、画像生成分野においては自分が使えるようなものではなかった。

使わないと決めたもの

Impachiではアートとサウンドを生成AIで作らない。これは確定事項だ。 アートに関しては、これまでのキャリアにおいてこだわりを持って作ってきたが、現状のAIのレベルが少なくとも自分の最低基準に達していない。 もちろん世間的なバッシングの強さも含めて、あまりにもリスクがありすぎると思っている。

前段では触れてはいないが、サウンドも同じだ。 現段階での最有力Sunoをしばらく触って実際に作ってみたが、こちらもゲームに使うには難しい。 ボーカル入りの曲であれば、バックの音の品質が悪くてもある程度は聞けるのだが、 ゲーム音楽=インストゥルメンタルとなると、音質の低さが我慢ならない。 特に作曲AIのほとんどが、プロンプト指示があって無いようなものなので、メロディの変化もできず、コードも変えることができず、音色も変えることができない。 ゲームにおけるサウンドは、私がもっとも重要視しているといっても過言ではない。 進化はしているが、まだ数年は使い物にならないだろうし、使う気もない。

使っているもの

2026年4月現在、自分がどういう環境で開発や会社運営をしているかを書いておく。

今は、「Antigravity+Claude Code for VS Code拡張」で落ち着いている。 エディタ付きの開発統合環境に、日本語の入出力性能が高いClaudeを組み合わせて使っている。 ちなみに現在開発中のゲームはUnity上で進めている。ClaudeからUnityを操作できるようにしているが、さすがに細かい話なのでまたの機会に。

何をさせているかでいうと、まずはやはりコーディングだ。 今のAIはテキストの生成と読み取りが得意で、プログラミング言語もテキストデータなので相性が非常に良い。公開されたコードが大量にあるぶん、学習データも豊富だ。 ちなみにこのコーディングの分野でClaudeは、業務では2026年現在一強だと思っている。

15年前まではITエンジニアだったので、コードは書けなくはないが、ゲームのコーディングとなると敷居は高い。 ただ、Claudeとタッグを組むことで、自分がアイディアを考え、Claudeに実装させるというのが容易になった。 「となるとエンジニアがいらない?」と思われがちだが、実際はそうはならない。 古本CTOの方が技術的なアプローチの知見は多いので、エンジニアがいて助かることも多い。 AIがどんな優秀でも自走はできない。我々が指示も与えていない面白い仕様・設計は生まれず、実装もされない。

次に、ゲーム企画や仕様をまとめることにも使っている。 最初はWeb版で、壁打ちをしながらまとめていったが、勝手に仕様を変えたり読み間違えたりすることが多かった。 ゲーム企画の壁打ちというのは、相手の反応を見ながらアイディアの足し算引き算をしていく作業だが、人間相手じゃなくても行えるというのは非常にありがたい。 一方で、結局はチャットのテキストから私が抜き出して、テキストファイルにまとめるという作業をやっていた。 開発統合環境ではそれが自動で行える。また、他のファイルとの整合性も取れるし、チェックできる。 足りない情報はWebからリサーチもできる。最高か? ゲームの世界では、世の中に無いものを生み出すことが必要。その場合、AIは正解を0から生み出せない。 面白い、面白くないといった感情も、過去の人間が書いた文章から「統計」として出力することができるが、 今までにないものを面白いと確信をもって作り出す能力はないと断言できる。 もちろん、書かれたテキストから推論をするのは非常に得意であるので、少なくともゼロイチのアイディア出しを得意とする私にとっては良い相棒なのだ。

あとは、会社運営においても役立っている。 会社設立の書類作りからはじまり、請求書発行、各種申請、給与・会計処理、タスク処理、このWebサイトも生成している。 Webサイトにおいては、あらかじめ大量に学習させた私の生い立ちや思考から、自動生成させてみたが、 あまりにも気持ちの悪い文章ができてしまったため、私自身が書いている。 英語翻訳に関しても自動翻訳の仕組みまで作った。 これらをそれぞれ個別のサービスを使って実現することもできるだろうが、一本化できているのは創業したてで資金面に乏しい会社にとっては非常に大きい。

3人でゲームを作るということ

Impachiは3人でスタートしている。AIという存在がなければ、おそらくもっとメンバーは必要だっただろう。 とはいえ、AIがいれば今まで数十人で作ってきた規模のゲームが作れるかといえば、間違いなく無理だ。 アートやサウンドではAIを使わないので、協力スタッフが必要だし、 企画やプログラムにおいても我々が指示した以上のものが出てくることはない。

大きく変わった点でいえば、以前なら実装の物量が大きすぎて泣く泣くやめていた企画や仕様が、実現可能になってきている。 直近の話でいえば、AIにテストプレイさせ、その感想を書かせるところまで試している。 人間がテストせずにリリースすることはないが、バランスを統計的に調べたり、敵の思考を調整したり役立つところは多そうだ。 時間のかかる工程のスケジュール圧縮も期待できる。

AIは70点を高速で出す道具だと思っている。 ゲームというエンターテインメントにおいて、70点は致命的に低い。 残りの30点は、独創性のあるゲームデザインや感情を揺さぶる世界観やシナリオ、そしてアートやサウンドのクオリティだ。

AIを活用していることを公言するとリスクもあるが、あえて文章に記す。 AIの力を借りつつも、独創性もクオリティも高い面白いゲームを作っていければいいと思う。